LabChartで記録したTeleFiphoのデータをpMATで解析する方法

pMATはRutgers大学のDr. David Barkerらによって作られたファイバーフォトメトリ―解析用のフリーソフトウェアです。LabChart等サードパーティのデータ記録装置で記録したTeleFiphoのデータをpMATで読み込んで解析する方法について説明します。
作成日:2023/04/11

LabChartで記録したTeleFiphoのデータをpMATで解析する方法

 

PowerLabのLabChartソフトウェア等、サードパーティのデータ記録システムで記録したTeleFiphoのフォトメトリ―データをpMATで解析する場合、pMATでの読み込みに対応したCSV形式のファイルに変換する必要があります。1列目の時間データ、2列目のフォトメトリ―データに加え、3列目にΔF/Fの計算に用いるためのコントロールチャンネルが必要になります。コントロールチャンネルはフォトメトリ―データの指数近似曲線です。コントロールチャンネルについての詳細は以下のYouTubeビデオチュートリアルによる解説をご参照ください。

09-Generating a Control Channel – Barker Lab

https://www.youtube.com/watch?v=waV3u2CdsYk

 

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pMATでTeleFiphoのデータを解析する方法

 

多くのデータ記録システムは1列目の時間データ、2列目のフォトメトリ―データのテキスト形式およびCSV形式でのエクスポートに対応していますが、3列目のコントロールチャンネルは上記の動画のようにExcel上で手作業で追加する必要がありました。この作業を簡略化するために、「pMAT Converter」ソフトウェアを活用できます。

 

 

LabChartで記録したデータをpMATに対応したCSV形式に変換する

 

3列目のコントロールチャンネルはフォトメトリ―データの指数近似曲線ですが、通信の途切れに起因するアーチファクトが多いと正確に近似できません。また、指数近似曲線の演算は0およびマイナスの値を用いることができません。データをエクスポートする前にこの2点への対応が必要となります。

 

LabChartの算術演算のMedianFilter関数を用いると簡単にアーチファクトを除去できます。各チャンネルの右側のタイトルの部分をクリックし、プルダウンメニューから「算術演算」を選択します。下記のように数式のところに

 

MedianFilter(Ch1, 110)

 

と記述しOKを押すと、アーチファクトが除去されます。第二引数はフィルタウィンドウのサンプル数ですが、サンプリングレートの半分程度の数値を入力し、徐々に数値を上げてアーチファクト除去効果を確認してください。下図の例ではサンプリングレート200Hzのデータに対し、フィルタウィンドウサンプル数110でアーチファクトが消えました。

 

 

 

前述のように指数近似曲線の演算は0およびマイナスの値を用いることができないため、もしも解析したいフォトメトリ―データの値にマイナスの部分がある場合、オフセットを追加してすべてプラスになるようにします。アーチファクト除去の時と同様に、各チャンネルの右側のタイトルの部分をクリックし、プルダウンメニューから「算術演算」を選択します。下図の例ではフォトメトリ―データのベースラインが-0.8程度のなので、オフセット2を加えて0を十分に上回るようにします(1以上にすることを推奨します)。下図のように、数式のところに

 

Ch1+2

 

と記述しOKを押すと、オフセット2がデータ全体に適用されます。

(もしもpMAT Converterで生成されるコントロールチャンネルの近似曲線が正確でない場合、算術演算の機能で x10 ~ x100000 を掛け算して十分に大きな値にしてお試しください。)

 

この2つの処理はどちらも同じ「算術演算」機能を使っており、数式を下記のように記述すると一度に両方の処理が行えます:

 

MedianFilter(Ch1, 110)+2

 

以上の処理が終わったら、解析したい部分のデータをエクスポートします。

LabChartのChartビュー上でエクスポートしたい範囲をドラッグして選択し、メニューのファイル → エクスポート を選択します。

名前を付けて保存先を指定した後に現れる「テキストとしてエクスポート」ダイアログ中で、以下のように設定します:

 

・現在の選択範囲にチェックを入れる。

・ブロックヘッダーのチェックを外す。

・時間および常に秒を表示にチェックを入れる。

・日付、コメント、イベントマーカーのチェックを外す。

 

 

OKをクリックすると、テキスト形式(拡張子.txt)でファイルがエクスポートされます。このテキストファイルは1列目が時間データ、2列目がフォトメトリ―データでタブ切り形式になっています。LabChartのデータに限らず、この形式になっているテキストデータであればpMAT Converterを活用できます。ファイル名は半角英数字にしてください。データの保存先のパスに日本語フォントが無いようにしてください。pMAT ConverterおよびpMATは日本語フォント非対応です。

 

 

pMAT ConverterのショートカットアイコンをダブルクリックしてpMAT Converterを起動します。File → Open から.txt形式のファイルを選択します。この選択画面はバッチ処理に対応しており、キーボードのShiftやCtrlを押しながら.txtファイルを複数選択することで複数のファイルを一度に指定できます。Convert to pMAT CSVボタンをクリックすると.csv形式へのエクスポートが実行されます。複数のファイルを選択した場合は順次エクスポート処理され、現在処理したファイル数 / 全ファイル数が画面左下に表示されます。

 

 

 

 

 

.csv形式に変換したファイルをExcel等で開くと、3列目にコントロールチャンネルが追加されていることが確認できます。このCSVファイルをpMATで読み込みます。

 

 

 

イベントデータのエクスポート

 

pMATではPeri-Event Time Histgrams (PETH)などの解析を行うために、イベントデータの読み込みが必要になります。上記フォトメトリ―データの.csvファイルを読み込んだ後に、イベントデータの.csvファイルの読み込みを要求されます(PETHなどを行なわない場合は適当なダミーのイベントデータの.csvファイルを用意してください)。LabChartでイベントデータを記録するには方法はいろいろありますが、ここではCh1にフォトメトリ―データを、Ch2にイベントデータを記録した場合について解説します。たとえば下図のようなデータです:

 

 

メニューの セットアップ → チャンネル設定 をクリックしてチャンネル設定画面を開き、画面左下のチャンネル数を3に変更します。空のCh3が表示されます。

 

 

空のCh3のタイトルをクリックして現れるプルダウンメニューで サイクル演算 を選択します。

 

 

 

サイクル演算の設定画面の右上のソースをCh2にし、イベントマーカーにチェックを入れます。左下の設定変更をクリックします。

 

 

 

サイクル演算検出設定画面で左中段の微分にチェックをいれ、右中段のサイクル検出設定のバーを操作してイベントデータのパルスの立ち上がりにイベントマーカーが付くように調整します。調整が終わったらOKをクリックします。

 

 

メニューの ウィンドウ → データパッド をクリックしてデータパッドを開きます。カラムAのタイトルの部分をクリックし、データパッドカラムAの設定画面で左側は「選択範囲およびアクティブポイント」、右側は「時間」を選択します。左下の「フォーマット」をクリックし、セルのフォーマット画面で左のカテゴリーは「時間」、右のタイプは「秒での幅」を選択し、OKをクリックします。

 

 

メニューの コマンド → データパッドに繰り返し追加 をクリックします。

 

 

データパッドに繰り返し追加画面で検索対象を「イベントマーカー」にし、追加をクリックします。

 

 

データパッドにイベントマーカーの時間データが追加されます。この数字をドラッグして選択し、Ctrl + Cでコピーします。

 

 

Excel等を開き、Ctrl + Vで貼り付けます。pMATのイベントデータのCSVフォーマットは1列目にイベント名、2列目にイベントのオンセット時間、3列目にイベントのオフセット時間です。このフォーマットに合うようにExcel上で編集します。3列目のイベントのオフセット時間は2023年4月時点では解析に使われていないので、2列目のオンセット時間と同じ値をコピー&ペーストしてください。これをカンマ区切りのCSV形式で保存してください。ファイル名は半角英数字にしてください。これでイベントデータをpMATで読み込む準備ができました

 

 

以上のLabChartの設定はメニューの ファイル → 設定を保存 で設定ファイルとして保存できます。次回以降はこの設定ファイルをダブルクリックで開き、そのまま記録を行うか、メニューの ファイル → 追加 で記録済みのファイルにこの設定を適用できます。

 

 

 

pMATにデータを読み込む

 

pMATを起動します。メニューの Import Data → Import CSV Filesを選択します。まず、フォトメトリ―データを選ぶ画面になるので、.csv形式にしたフォトメトリ―データを選択します。

 

次に、データのはじめと最後で削除するサンプル数の入力の画面になります。0は受け付けないようなので、startとendの両方に1と入力してOKを押します。

 

 

次に、イベントデータを選ぶ画面になるので、.csv形式にしたイベントデータを選択します。これでデータの読み込みが完了します。

Plot Trace Dataのところで「Signal vs. Fitted Control」および「Normalized Delta F/F」にチェックを入れ、その下のPlot Event TicksのところのEvent 1にチェックを入れてその右のプルダウンメニューでイベントを選択します。Eventが2つある場合はEvent 2も同様にチェックしてイベントを選択します。

 

 

「Plot & Save」ボタンを押すと以下のように「Signal vs. Fitted Control」および「Normalized Delta F/F」のグラフが描画されます。

 

 

Peri-Event Time Histgrams (PETH)のところで「Calculate AUC/Peak Values」ボタンを押します。右のSelect at least oneのところで「Z-Score PETH」にチェックを入れ、その下の「Plot & Save」ボタンを押すと、Z-Score PETHが描画されます。