pMATでTeleFiphoのデータを解析する方法

pMATはRutgers大学のDr. David Barkerらによって作られたファイバーフォトメトリ―解析用のフリーソフトウェアです。TeleFiphoのデータをpMATで読み込んで解析する方法について説明します。
作成日:2022/04/01

pMATはRutgers大学のDr. David Barkerらによって作られたファイバーフォトメトリ―解析用のフリーソフトウェアです。様々なファイバーフォトメトリ―システムで記録したデータについて、1つの標準化された解析プラットフォームを提供することを目的として開発されたオープンソースソフトウェアです。Windows PCおよびMac PCにインストールして使うスタンドアロン版(pMAT_Independent_Development.zip)と、Matlab版が用意されており、前者は下記リンクから誰でもすぐにインストールして使うことができます:

pMAT (Photometry Modular Analysis Tool) – djamesbarker / pMAT

https://github.com/djamesbarker/pMAT

 

pMATについての詳細は原著論文をご参照ください:

pMAT: An Open-Source Software Suite for the Analysis of Fiber Photometry Data

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7853640/

 

YouTubeによるビデオチュートリアルが用意されています。インストール方法、および基本的な操作方法についてはこちらをご参照ください:

pMAT Tutorials – Barker Lab

https://www.youtube.com/watch?v=-pmzwPBfRGQ&list=PLUej2ATvfcttc41wCPWJGxLGIwG31mG3o

 

以下、TeleFiphoで記録したデータをpMATで解析する方法について解説します。(TeleFipho v1.9.3、pMAT v1.2で試したものです。)

 

 

フォトメトリ―データのエクスポート

 

TeleFipho v 1.9.3では新たに2つの機能が追加されました:

・Export Data for pMAT

・Export Event for pMAT

これによりExcel上での調整無しに直接pMATで読み込めるcsvファイルを出力できます。

(v.1.9.3へのバージョンアップは無償です。弊社までお問合せください。)

 

エクスポートを行う前に、Setup -> Preferenceを選択してPreferenceウィンドウを開き、下記2つの数値設定を確認します。これらはΔF/Fの計算に用いる適切なコントロールチャンネルの作成に重要です。

・Initial Elimination Samples for pMAT

・End Elimination Samples for pMAT

 

 

・Initial Elimination Samples for pMAT(デフォルト値 20):

エクスポートするデータから除外したいデータの冒頭からのサンプルポイント数を指定します。データのはじめの~0.15秒程度は通常は通信準備のために有効なデータが記録されず、32768という値になっているため、この期間を含んだ範囲を除外してエクスポートすることを推奨します。例えば20と指定した場合、サンプリングレートは100Hzなので、20 * 0.01 = 0.2秒の冒頭のデータが除外されてエクスポートされます。

pMATの”Number of samples to eliminate at start:”と同様の機能です。

 

・End Elimination Samples for pMAT(デフォルト値 0):

エクスポートするデータから除外したいデータの終わりからのサンプルポイント数を指定します。

pMATの”Number of samples to eliminate at end:”と同様の機能です。

 

File → Export Data for pMAT... を選択し、名前をつけて.csv形式でデータを保存します。

 

 

エクスポート後の.csvデータはpMATのフォーマットに合わせ、1列目が時間、2列目がフォトメトリ―データ、3列目がコントロールチャンネルになっており、直接pMATで読み込めます。

 

 

3列目のコントロールチャンネルはpMATでΔF/Fの計算ために用いられます。コントロールチャンネルはフォトメトリ―データの指数近似曲線です。

コントロールチャンネルについての詳細は以下のYouTubeビデオチュートリアルによる解説をご参照ください。

09-Generating a Control Channel – Barker Lab

https://www.youtube.com/watch?v=waV3u2CdsYk

 

 

 

 

イベントデータのエクスポート

 

TeleFiphoでイベントデータを記録するには以下2つの方法があり、それぞれについて解説します。

1. 「Comment」機能で記録したイベントデータをエクスポートする方法

2. アナログ入力チャンネルにパルスとして記録したイベントデータをエクスポートする方法

 

 

1. 「Comment」機能で記録したイベントデータをエクスポートする方法

 

TeleFipho v 1.9.3では「Export Event for pMAT」機能によりExcel上での調整無しに直接pMATで読み込めるイベントのcsvファイルを出力できます。

 

データ記録中に画面下のAddをクリックするか、記録後のデータの任意の場所にカーソルを合わせて画面下のAddをクリックすることで、データ上に垂直の点線によるタイムスタンプと任意のコメントを記録することができます。コメントの一覧はメニューの Window → Comment で開くCommentウィンドウで確認することができます。

 

 

 

 

File → Export Event for pMAT... を選択し、名前をつけて.csv形式でデータを保存します。Export Data for pMATと続けてエクスポートする場合はファイル名が重複して上書き保存しないようにファイル名を変更してください。

 

 

エクスポート後の.csvイベントはpMATのフォーマットに合わせ、1列目がイベント名、2列目と、3列目がイベントのタイムスタンプになっています。2列目と3列目は同じ値が入ります。2列目はイベントのオンセット、3列目はイベントのオフセットを意図したフォーマットになっていますが、pMAT v1.2ではイベントのオフセットが解析で利用されていないため、2列目と同じ値で構いません。

 

 

以上でエクスポートが完了しました。

 

代わりの方法として、コメントウィンドウ上の値をExcelにコピー&ペーストして手動でcsvファイルで保存する方法があります。

コメントウィンドウ上でドラッグして一覧の任意の箇所を選択し、右クリック→Copy Selection をクリックするとクリップボードに数値がコピーされます。

 

 

Excelで新規のドキュメントを開き、A列にテキストを、B列とC列にタイムスタンプを貼り付けます。B列とC列に貼るタイムスタンプは同じもので構いません。

 

 

Excelのメニューの 「ファイル」→「名前を付けて保存」 で、ファイルの種類をCSV(コンマ区切り)(*.csv)を選択して、半角英数字で任意の名前を付けて保存します。これでイベントデータをpMATで読み込む準備ができました

 

 

 

2. アナログ入力チャンネルにパルスとして記録したイベントデータをエクスポートする方法

 

TeleFiphoのアナログ入力はTeleFiphoソフトウェアのメニューのSetup→Channel Settingsを開き、Ch Numberを2にしてOKすると有効になります。TeleFipho受信機の

アナログ入力BNC(A-IN)で0~5Vのアナログ信号を記録することができます。このアナログ入力に電気刺激や光刺激刺激等のイベントを外部装置からのTTLパルスとして記録することができます。以下のように、Ch1はフォトメトリ―データが、Ch2はTTLパルスが記録されます。

 

 

 

フォトメトリ―データを File → Export TXT... で.txt形式にエクスポートする際、Ch2のパルス信号も一緒にエクスポートされます。それをExcel上で見てライジングのタイミングを抽出する方法も有効ですが、ここではTeleFiphoのData Pad機能でライジングのタイミングをテキスト化します。

 

メニューの Window → Data Padを選択します。

 

 

Datapadウィンドウの下部のTrg Add機能で閾値によりライジングを検出することができます。Trg Addボタンの右のChを「2」にします。Threshが1.500V、T1が0.000s、Risingにチェックが入っていることを確認します。よく使われる5Vおよび3.3Vの外部信号を記録している場合はThreshはデフォルトの1.500Vのままで問題ありません。

Datapad画面上部のAnalysisの一番左のプルダウンメニューをT1にします。T1は0.000sになっているので、ライジングのタイムスタンプになります。

 

 

Trg Addボタンを押すと、データのはじめから最後までライジングのタイミングを検出してデータパッド上に数値を追加する作業が自動で繰り返されます。一番左の列がT1、つまりライジングのタイムスタンプです。

 

 

データパッド上でT1の列のセルをクリック&ドラッグして選択し、右クリックメニューから Copy Selectionを選択します。クリップボード上に数値がコピーされます。

 

 

Excelで新規のドキュメントを開き、B列とC列にCtrl + Vでタイムスタンプを貼り付けます。B列とC列は同じ数値でかまいません。A列に任意のイベント名を入力します。

 

 

Excelのメニューの 「ファイル」→「名前を付けて保存」 で、ファイルの種類をCSV(コンマ区切り)(*.csv)を選択して、半角英数字で任意の名前を付けて保存します。これでイベントデータをpMATで読み込む準備ができました

 

 

pMATにデータを読み込む

 

 

pMATを起動します。メニューの Import Data → Import CSV Filesを選択します。まず、フォトメトリ―データを選ぶ画面になるので、.csv形式にしたフォトメトリ―データを選択します。

 

次に、データのはじめと最後で削除するサンプル数の入力の画面になります。0は受け付けないようなので、startとendの両方に1と入力してOKを押します。

 

 

次に、イベントデータを選ぶ画面になるので、.csv形式にしたイベントデータを選択します。これでデータの読み込みが完了します。

Plot Trace Dataのところで「Signal vs. Fitted Control」および「Normalized Delta F/F」にチェックを入れ、その下のPlot Event TicksのところのEvent 1にチェックを入れてその右のプルダウンメニューでイベントを選択します。Eventが2つある場合はEvent 2も同様にチェックしてイベントを選択します。

 

 

「Plot & Save」ボタンを押すと以下のように「Signal vs. Fitted Control」および「Normalized Delta F/F」のグラフが描画されます。

 

 

Peri-Event Time Histgrams (PETH)のところで「Calculate AUC/Peak Values」ボタンを押します。右のSelect at least oneのところで「Z-Score PETH」にチェックを入れ、その下の「Plot & Save」ボタンを押すと、Z-Score PETHが描画されます。